マイケルエディと植村絵美のアートプロジェクト
「TPPミュージアムアートオークション」
2014年12月21日(日)14:00 ~ 17:00
@さっぽろ天神山アートスタジオ

SIAF2014の企画としてTPPをテーマに、コミュニティや現代社会を見通すアートプロジェクトが開催されていました。詳細は>http://tppmuseum.com

僕も資料館で活動していたこともあり、展示やワークショップにもちょこちょこ顔を出していたのですが、今回は最後のクロージングイベントにゲストとして参加しました。僕は「TJY48写真集」のオークションに合わせて「選挙とメディア」と言う内容でトークをしました。下にその内容をご紹介します。








選挙とメディア

みなさん。お集まり頂きありがとうございます。これからお話させていただくのは選挙とメディアについてです。
 まずは、「TJY48(Tenjinyama)」ということなので、「AKB48」で選挙を考えてみましょう。個人的にAKB48は好きでも嫌いでもなく、その正否を問う気もないので、そこら辺はなにとぞご了承ください。「AKB48」はグッドデザイン賞に輝いたこともあるほど、よくデザインされた商業モデルを持っています。こちらはその姉妹グループをあわせた「AKB48グループ」選抜総選挙のためのポスターです(スライド:選挙ポスターのイメージ)。この選挙はシングル曲の選抜権をかけて行われます。
 この選挙なのですが、国政選挙などと比べて大きな違いがあります。それは何でしょう? 
 一票は文字通り買うことができます。
 響きが最悪ですね。
 CDを「大人買い」することによって、投票数を無制限に増やすことができるのです。これは、制限のないある種の不平等選挙であり、投票券つきCDを3000万円分買った強者がいるほど、「人気」の過熱状態を生みだします。パロディにすぎないと言えばそれまでなのですが、リアルな選挙にも、専門性が低いと思えるタレントやスポーツ選手などが、「人気」によって当選することは確かにあります。今回の選挙でも、人気取りのために、野党が打ち出す耳あたりのいい政策が、投票率の低下を招いたという考えもあるようです。
 もし、AKBのメンバーが出馬したら、無党派層などいろんな理由でかなり票が集まったのではないかと思います。
 究極のアイロニーですね。
 さて、インターネット選挙が前回から始まりました。これはネットで投票できるという意味ではなく、ネットで選挙広報ができるようになったということです。僕の選挙に対する情報源は概ねニュースサイト、選挙のための特設サイトやSNSです(スライド:主なSNS企業ロゴのイメージ)。テレビや新聞は少し目を通す程度でした。ここで重要なのはSNSです。SNSは、投票者情報を「シェア」「リプライ」することによって、間接的に選挙活動に加担します。SNSは「人は自分が見たいものを見る」「類は友を呼ぶ」というように、自らが欲望する情報を引き寄せて、瞬時に拡散してしまう強い感染力がありますが、一方で、情報は蓄積するよりも短期間で流れていく傾向があります。その上、匿名性が原因とも言える「炎上」「コピペ」など、リアルタイムの場外乱闘もあります。選挙広報期間中、小学4年生を騙ったwebサイトを制作し、首相がTwitterで言及するなどして話題となった事件がありました(スライド:「どうして解散するんですか?」webページトップ画像)。「どうして解散するんですか?」の企画者は、ある対談でとにかく何でも「炎上」させて議論を促し、若者の選挙に対する意識を高め、同じ価値観を持つ人々とつながりたいと語っています。志は一見立派なのですが、そこには一貫した思想は感じられず、なんとも言えない違和感が残ります。このようにネットの情報は玉石混淆。マスメディアのように情報の正確性は担保されているという考えを捨て、ネットの情報は誰が何を元に語っているのか、「シェア」「リプ」をする前に、まずは疑いと留保の姿勢でうまくつき合っていく必要がありそうです。
 ご存知のように今回の投票率は戦後最低でした。ここからはちょっと個人的に思い知らされたことなのですが、投票率が下がっているということは、実は一票そのものの価値は上がっているともいえます。投票に行った人はある程度考えを持った人ですが、どれだけ強い思いを抱いていても一票は一票なんですよね。政治について時間と労力(つまりコスト)をかけて考えた人と、あまり考えてなくて適当に惰性で投票した人の「一票の格差」というのは、数える術はもちろんないのですが確かに存在してるんだなあと。
 そして今、僕が投票をして感じているのは、一昔前の候補者が口にしていた「清き一票」は遠い昔なんだということです。つまり、少子高齢化をはじめ、待ったなしの問題が山積していながら、いまだに成長を欲望する社会。そして、それを助長するように垂れ流しつづけるメディア。政治の透明性「清さ」は最低限確保しつつ、多少濁ってはいても、私たち自身が将来負わなければいけない現実的な「重さ」に、考えをシフトする必要がある気がします。そして何より政治家の方々には、一票の「清さ」だけではなく、「重さ」を背負っていただきたいと願っています。
 最後にオマケとして、「支持政党なし」に触れて終わりとしたいと思います(スライド:「支持政党なし」選挙特設ウェブサイトトップ画像)。個人的に、その中身は非常に残念なものだと感じますが、10万票以上を獲得したえげつないアイデアは特筆すべきものです。ただ、実現性は怪しいものの、気になったのは直接民主制と間接民主制のあいだを模索するシステムを取り入れようとしていることです。80%以上の高い投票率を持つスウェーデンでは、党の青年部を設けて10代〜20代の政治家が活躍しています。そのあり方も多様で、候補者が直接有権者とネット上で議論し、スマホ等で議決する党が存在します。「http://direktdemokraterna.se」。当選した候補者は、オンラインでつながった支持者の投票をもとに発案した政策を忠実に実行しようと努めます。日本でも前回の選挙で、この流れで「インターネッ党」が登場し話題を集めました。政策立案などの役割分担や信頼性、セキュリティなど課題はあるものの、選挙システムの再考を促すような新しい可能性も垣間みることができます。来年から日本でも投票年齢が18歳に引き下げられるそうですが、これからは少子高齢化、社会保障等、選挙の世代間格差もこれから重要なファクターになっていくと思います。なんにせよ選挙離れが叫ばれる昨今、システムそのものに言及するような新しい潮流は、広い目で見れば好ましいことかもしれません。
 以上です。ありがとうございました。


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