INSTALLATION


「makeねつぞうする」

エイジングを施した原稿用紙二枚に万年筆、ジェッソを塗布した机といす、フィルムケース
サイズ可変

本作品は、1年前に画家、久野志乃と共催した「FABRICATION」展がきっかけとなり展開した。10年以上前、ロンドンのマーケットで匿名のネガフィルムを買ったエピソードを元に、絵画や写真といった、視覚的メディアではなく、言葉で表現したいと考えた。
 歴史とは呼べない私的な記憶。しかし、アーティストにとって、それが出発点となり、大きな表現に結実することがある。人は記憶を糧に生きているが、それは実に不確かなものであり、あえて言えば、忘れやすく、あいまいであるからこそ、ある種の「あそび」となり、逆に人々をつなげ、また生かすのだと考える。私が伝えたいのは、記憶の儚さ故に持つ美しさである。本当の価値とは「モノ」ではなく、人の中にこそあるのではないか?記憶そのものを作品として提示し、その価値を問いかけたい。
 私、匿名の撮影者の複数の視点を、時間と記憶そのものを新しく織り上げ(fabricate)、作品として提示する。5ポンドで売られていた記憶は、複製され、上書きされ、5ポンドで売られ、閲覧者の新しい記憶となって広がり生き続ける。 たとえそれが捏造だとしても。

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